【幼保施設】処遇改善等加算申請の全体像と注意点について
処遇改善等加算申請が実施され、多くの幼保施設で定着してきました。とはいうものの、まだ踏み切れない施設や毎年返還が発生している施設、通達による変更に対応しきれていない施設があります。
今回、改めて概要を確認することで、現時点での加算の取り方の確認をするとともに、単に計算するだけでなく、今後課題となってくる点など注意すべき点について、まとめていきたいと思います。
この記事を読んでいただきたい方
- 処遇改善等加算申請に踏み切れない方、申請したいと思いつつも仕組みが分からない方。
- 処遇改善等加算申請を実施しているものの、実績報告で毎年、返還が発生している方
- 処遇改善等加算申請をしているが、申請内容に不安がある方。
処遇改善等加算申請の概要
幼保分野は、職員の勤続年数の短さや給与の低さが原因となり、キャリアを積むことや定着・採用が難しい現状が続いておりました。その状況を打開すべく、国が筆頭となり始まったのが処遇改善等加算です。
処遇改善等加算は、単に給与を上げることを目的とせず、長期的なキャリアプランに基づいた、保育士の成長・それにより経験値が上がり、保育の質が上がっていくことが目的です。
その目的を果たせるような処遇改善等加算を各施設で実施し、保育士・幼稚園教諭の待遇改善・キャリアアップを果たしながら、保育の質が上がるように取り組むことが重要です。それでは概要について説明します。
処遇改善等加算Ⅰ
処遇改善等加算Ⅰは①基礎分、②賃金改善要件分(うち、③キャリアアップ要件分含む)、それに人事院勧告対応分があります。経験年数に応じて計算する「①基礎分」は、実は絶対賃金改善に払いきる必要があるわけではありません。施設によって配分を検討できます。その一方で「②賃金改善要件分」においては必ず賃金改善に当てる必要があります。ほかにも、基礎分の算出の際必要な、「経験年数」ですが、資格がない期間であっても、対象施設で働いた年数であれば含まれます。
また、支給方法は月次でも賞与などの一時金でもどちらでも構いませんが、賃金改善のルール等を予め周知し、自治体によっては本人の同意を得る必要があります。法定福利費等を事前に差し引くことも可能です。
なお、人事院勧告対応分は公定価格に含まれていますので、加算の申請は不要ですが、計算・検証は必要です。
処遇改善等加算Ⅱ
処遇改善等加算Ⅱは職務分野別リーダーや、マネジメント職として副主任や専門リーダー、等の役職に対し、加算を付けることで、一歩一歩キャリアアップを実感できるよう実施されております。
要件としては、各リーダーとなった職員は①研修を受けること、②リーダーを経験すること、③リーダーとして発令する(辞令交付や労働条件通知書へ役職と金額を記載し本人へ通知する)の3点を満たす必要があります。対象は保育士以外の職員(調理員や栄養士)も含まれます。但し園長、副園長、主任は原則対象外です。(例外あり)
また、処遇改善等加算Ⅱは、必ず「月額支給」し、賃金改善に当てる必要があります。形式としては役職手当でも基本給でも構いません。
処遇改善等加算Ⅲ
こちらは、施設に勤務する職員(非常勤職員を含む)に対して、3%程度(月額 9,000 円)の賃金改善を行うものです。均等に配分する必要はなく、個々の施設の状況によって配分することが可能です。なお、2/3以上は月額支給すること、全額賃金改善に当てる必要があります。
処遇改善等加算申請の注意点
概略は上の通りですが、それでは何に気を付けたら良いか?という声が聞こえてきそうです。施設ごとに、自治体、職員や子どもの人数も異なり、単純に正解をお伝えすることが出来ませんが、ここでは可能性として考えられる注意点を記載します。
認可外保育所は申請不可
認可外保育所は原則、処遇改善等加算の対象外です。そのため申請が出来ません。ただし、企業主導型保育所については、独自の加算があります。最近、企業主導型保育所での返還事例が増えておりますので、心配な方はご相談ください。
企業主導型保育所は独自の計算方法
上に記載した通り、企業主導型保育所は施設型給付と異なり、独自の計算となります。対象職員が異なる点、年度をまたいで繰り越せない点などが異なります。返還を指摘されている場合は見直しが必要かもしれません。
認定こども園や幼稚園も要注意
認定こども園や幼稚園については、施設型給付へ移行している施設(幼保連携型・幼稚園型)であれば、処遇改善等加算を受けられますが、移行していない施設については受ける事が出来ません。
幼稚園については、給付を受けるべきか、私学助成を受けるかといった話題となりますが、個々の園の事情や職員の状況によっても異なりますので、また別の機会に記事にしたいと思います。気になる方はお気軽にご相談ください。
今後課題となってくる点について
こんな良い制度なら給付を受けだ方が良いのでは?と思う方もいらっしゃると思います。この処遇改善等加算申請ですが、課題は多く、今後も新たな課題が増えると思います。注意点とも重なる点がありますが、以下に記載します。
自治体より返還を求められるケースが増えている
実は実績報告後に返還を求められたり、翌年へ繰越しが続いている園があります。理由は様々ですが、複雑な制度に加えて、職員の入れ替わりにより、支払いに当てきれない、園児の増減が大きい等様々な理由があります。繰り越せるから良いというものではなく、適正に払いきり、繰越が無いように実績報告が出来るようにしましょう。
不正受給について、指摘される企業が出てきている
昨年から職員を架空に申請するなどし、監査等で指摘され、不正に給付金を受給したとして、返還を求められた企業が数社ありました。コロナウイルス感染症の影響で監査自体が自粛されていた事情もあり、今後このような指摘は増えると思います。このような事案が続くことは遺憾な事ですし、弾力運用がされている部分もルールが変わっていく可能性があります。一方で、知識がなく、返還不要であっても自治体の言われるがまま返還してしまう施設もあります。正しい知識を持つことが大切です。
処遇改善等加算申請Ⅱのキャリアパス要件が厳密になってくる
現在、処遇改善等加算のキャリアパス要件について、研修要件がありましたが、幼稚園・認定こども園については具体的な研修科目が定められておりません。今後、その辺りについても具体化されていくことにより、要件も厳密になっていくことと想定されます。
まとめ
いかがでしたか。
処遇改善等加算について、概略と注意点をまとめてきましたが、今後もアップデートされていく手続です。現状の処遇改善等加算申請の概要を知るのはもちろんのこと、毎年度通達等で変更があるため、その内容にも対応していく必要があります。また、不正受給など、問題が発覚し、監査等が厳しくなるなど、他の観点でも正しい知識を持って対応することが求められていくと思います。正しい知識を常にアップデートして、より良い施設運営に繋げていきたいですね。
当オフィスでも、処遇改善等加算申請、実績報告について、ご相談を承ります。不安な方、申請をしたい方、セカンドオピニオンとして、現状を確認したい方は、お気軽に問合せフォームよりご連絡下さい。
(無料相談も実施しておりますし、施設の規模に合わせてお見積り致します。)
ここまでお読みいただきありがとうございました。